地盤調査とは? [建築]
先日地盤調査を行う現場があり私はいつものように立会い、築地のマグロ仲買人がマグロの肉質を見るように、採取した土をネチョネチョと指でこねくりまわしてみた。「うん、悪くない。」
心配していたのには理由がある。
近くで工事が行われているほかの新築現場に地盤改良工事を行った痕跡が見えたからだ。
しかしながら当事務所の今回の現場で出たデータには何の問題も無い。こういう場合は対応に悩む事も多い。ただ今回はあまり心配していない。
と言うのも指で触ってみた土質や、地盤改良を行ったと思われる他の現場の前を通った時に水道屋が掘ったと思われる穴の土質にも不審な点が見られないからだ。
どうしても住宅会社は書類に現れる数値しか見ない。会社が大きくなればなるほどその傾向は強い。現場の地盤調査は地盤調査会社に外注のため、数字で表現できない現場の声を聞き落としがちだ。
近隣の御婦人方に世間話ついでにちらっと土地の履歴を聞くこともとても重要。結構重要な証言を引き出せる事も多い。
ここまで書いて「俺は刑事か?」なんて自己ツッコミをしそうになるが、情報収集には念を入れたいのはどの職業でも同じと言う事か。
本当に書きたかったことはここから。
地盤改良を行うか、行わないかの「境界」は誰の目にも分かるほど明確なのか?ということ。
社内規定か何かで、数値○○が何m続いたら地盤改良が必要、といった基準は良く聞くが、そこまで細かい数字を信じすぎても良いのか甚だ懐疑的ではある。もちろん私も数字を見てはいるけれど、あくまでもSSは簡易調査であることは肝に銘じるべきだと思っている。現場を知っている人ならば同意してくれるだろう。
住宅供給側から見れば「クサいデータの物件はすべて地盤改良をさせる。」のが得策であろう。なぜなら不同沈下で揉める危険も回避できるし、何せ地盤改良工事の利益も期待できる。たとえそれが過剰でも、だ。
過剰で安全側ならばすべて許されるのか、私はそこに疑問を持ち続けている。限られた施主さんの予算の枠では、例えば100万円を地盤改良に回せば例として2坪の床面積を削らなければならないかもしれない、薪ストーブを諦めなければならないかもしれない。
今回は、地盤保証も入ることが可能なので地盤改良せずに進むリスクを負担できる土台がある。誰にも迷惑を掛けずに過剰を避ける事ができそう。
広域の土地全体を見る、すぐ隣の建物のクラック・不同沈下を参考にさせていただく、道路の割れを見る、もちろん調査の数字も見る、ミクロとマクロの目を両方使う視点を持ちたいと思う。それが現場主義である私の持論だ。
大林勇設計事務所
2009-12-04 09:35
nice!(0)
コメント(2)
トラックバック(0)
地盤はもちろん、建築設計や施工、監理の色々な面で総合的判断の出来る(心掛ける)isamuさんのような建築技術者さんになるには良き師匠と多くの経験が必要ですね。
by m (2009-12-05 18:06)
>mさま<br />
<br />
事件は会議室じゃなくて、現場で起きるんですよね。やっぱり。踊る大捜査線の青島のセリフはなかなか深いです。<br />
<br />
地盤については三井ホームの時に地盤研修で教えていただき、手動でSSをやってみたことが、貴重な経験になっています。<br />
あとは浄化槽の穴掘りにも立ち会ったりすると、SSのデータの裏づけもできますし、現場はヒントの宝箱です。<br />
by isamu (2009-12-07 07:41)