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愛知県立芸術大学の見学 [建築]

 名古屋CDフォーラム主催の「吉村順三建築を見る・聴く」という企画の案内があったので、これはチャンスとばかりに申し込み、吉村順三氏設計の愛知県立芸術大学のある愛知県の長久手(愛知万博の会場付近)まで行ってきました。





地形に馴染んだやさしい姿です。





コンクリート構造の建物を見上げると、このように軒天井には木を張り込んであります。





鉄骨で作られた窓周りの納まりは、細かい納まりの好きな吉村氏らしい仕事です。





住宅でも多用する、ラワン合板を講義棟の廊下でも用いています。





講義棟の廊下は天井高2.25mほどでした。





講義室から見ると外観の意匠のルーバーはこのように見えます。





さすが芸術大学です。





石材加工のアトリエもありました。まるで石屋です。





こちらは奏楽堂です。コンパクトで美しいホール。



見学をした建築関係者は私も含めて、皆興奮して写真をたくさん撮っていましたが・・・。



今、この建物を保存するか否かが議論されています。3/25の中日新聞でも改築論議が掲載されていました。

一般人の気持ちになって予備知識のない目でこの大学を見ると、お世辞にも綺麗、あるいは好意的に見ても美しく古びているとはとても言えないメンテ状況でした。



学生数1000人に満たない県立大学と潤沢な資金のある私立大学と比べるのは酷というものですが、



メンテが行き届かない。



劣化も放置。



木部は腐食、鉄は錆び、防水は劣化し漏水



客観的に見て汚らしく見える。



老朽化の名の元に解体、新築。



何とも残念なサイクルを辿りそうな気がして実に不安になります。



これは建物保存の難しい所で、残したい気持ちがなければ残らない、価値が認められなくては残らない、という物理的寿命よりも精神論のような部分も大いに関係してきます。「じゃあ、お前が何とかしろよ」と言われても一人ではどうにもならないのです。篤志家がドバッと寄付しても一過性の資金では永遠に続く保守メンテを賄い切れず、問題の解決にはなりません。



奈良美智氏をはじめとする著名なOBを輩出している名門ですので校舎が汚いという理由で志願者が減るとは思いませんが、docomomojapanに名を連ねているこの大学を今回初めて建物見学をさせていただいて建築の保存の難しさを考えさせられました。美しく古びるとは実に難しいものです。



大林勇設計事務所

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コメント 2

moro

奏楽堂、良いですね!建物の小口側のレリーフは確か、粟津潔氏によるものだったでしょうか。保存に関する提言はpenkou師匠もなさっていたと記憶しております。せっかくの吉村建築を大切にしてほしいですね。
by moro (2010-03-31 11:45) 

isamu

奏楽堂は、レーモンド氏の群馬音楽センターと同じ工法を取っているとの説明がありました。<br />
<br />
住宅ならば、「この家は必ず残せ。」と先祖代々家族で言い伝えられれば割と長寿命が期待できるのですが、公共建築は管理者の考えが建物の寿命と直結してきますね。それもトップが分かると方針がコロコロ変わるので手に負えません。
by isamu (2010-03-31 16:44) 

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