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長期優良住宅と床倍率 [建築]

「大林君、結局さ、長期優良ってどこが違うの?僕らが当たり前にやっている工法で問題になりそうな事ある?」と内藤材木店の大将から昨日電話があり、久しぶりに訪問。



今週は自分の家の見積の段取りをしたり、書類をまとめたりしながら長期優良住宅について計算したりいろいろ考え、分かり始めたところだったので現時点で知っている事をお話ししてきました。



内藤材木店の大将はとても木が好きで、商売を超えた木への愛情・こだわりがとても強い人なのでいつも刺激を受けます。「杉の人工乾燥?そんな材料やめちゃえ。杉の香りも色も無くなるよ。」と即答してしまう程のはっきりした人。



内藤材木店にしても当事務所にしても長期優良住宅の事でネックなのは床倍率のことかな。といっても構造的に弱いから悩んでいるのではなくて、評価する物差しが無いのです。



長期優良住宅を満たすには何種類かの性能等級を満たす必要があるわけですが、木組みを見せたい設計士を悩ますのは「耐震等級2以上」なのだと思います。ここに床倍率というキーワードが出現するわけです。



それで床倍率を設定するには



・根太に加えて12ミリ以上の合板または幅180ミリ以上の無垢板



というパターンか、



・24ミリ以上の構造用合板



しか面で施工する方法は数値化されておらず、我々の様に杉の厚板を根太無しで梁に掛け渡し踏み天井として施工する方法はまったく評価のしようが無いため計算上床倍率0になってしまうのです。これを認めてもらうには自分で強さを証明しなくてはならない・・・。実験に費用も掛かるはずですし、現実的ではありません。



現実的方法としては火打ち梁を多く入れて床倍率を稼ぐ方法もありますが意匠的にも無闇やたらに入れるのは心苦しい。



そのような場合には、杉集成面材の○パネル(一文字伏せます。)を使う手もあるのですが、大将曰く「杉の赤白の統一感が無く、大林君は多分好きじゃないはずだよ。いつもの厚板みたいに色身は揃わないし。」との事。



天井を組んでしまえば話は早いのですが、木組を見せる方法は好きなのでそこは変えたくない。このマニアックなこだわりが苦しみの元(笑)。それが私。



わざわざ時間と費用を掛けて耐震等級を取る事の意味が分からなくなりかけている今日この頃です。長期優良住宅の認証を得るには費用も時間も掛かるわけですから、もちろん施主さんにメリットがあって欲しい。暮らしが楽しくなるとか、頭のいい子が育つとか、ね。



でも・・・



税金控除か金利軽減、あるいは中小工務店の補助金100万くらいしかメリットが見当たらないのです。実際、役所の審査料だけでも5万位の費用は掛かるし、書類作成代行の会社も20万円近い価格設定との事。意外に費用が掛かるのです。



性能を証明することに費用が掛かるのであれば、同等の仕様で作って証明を受けない、と言う選択肢でもいいのではないかと。公的に認めてもらうことのメリットって本当にある?(中古住宅として流通させる際に長期優良のお墨付きの恩恵があるかもしれないが・・・。もっともそれだってどれほど違うのか将来の話は誰にも分からないけど)



ただ、経験も無いのに「無駄」とか言いたくないので自分の時間を使って実験的にやってみますが、お客さんに私が長期優良住宅を勧めるかはもう少し様子を見ようかと思います。本質を見失わないことが重要!



大林勇設計事務所

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