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ていねいな暮らしを再認識 [建築]

こんにちは、大林です。梅雨入りですかね。

先日のこと、大学の研究室の同期のススム氏より、スマホにピロッと連絡が入る。

「ウッ!」ついにこの日が来てしまった、と。

 私が建築の道で生きていくことに決めた「源泉」のような存在だった恩師、荒谷登北海道大学名誉教授の訃報だった。 私が24歳で大学院を修了した時に、定年で退官され、「一緒に卒業だなあ」とお話したくらいなので、十分長生きされた方ではないだろうか。

 2017年に札幌でお会いした時もやはり年齢なりにはお年を召していたようではあったが、それでも遠くにいても恩師の存在は偉大で、飛行機で飛んで行ってもこの世にもういないかと思うと、寂しさが募る。 今となってはあのときお会いしておいて本当に良かった。 その点では、後悔はまったくない。

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 私の結婚式のために遠路、浜松まで来てくださった際に「新しい本が出たよ。」と頂いたのが左の本。 よく考えると、どの本も頂いたり、教科書として直接手渡しで買ったり、どれも本屋の店頭では買った記憶がない。 貴重な環境だった。

 学生の頃は自分で家を建てた経験があるわけもなく、もちろん実務経験もゼロ。 建築環境工学の研究室に所属していながら、その恵まれた環境を十分に生かしていたとは正直言い難い。 当時の自分に「喝」を入れたいくらい(笑)、本当に反省。

 私の就職を本格的な採用試験をすっ飛ばし、電話1本で決めてくださったことも今となっては懐かしい思い出だ。 そして、その会社の社内講習で一級建築士を25歳で取らせてもらい、妻と出会ったのもその会社だというのだから、私と家族の人生に最も影響のあった人、と形容しても過言ではない。


 先生に習ったことは、数式と仮論よりもその根底にある思想のようなもの。

先生との会話では「豊かさとは何か?」とか「無償の富」とか、今になって現実として心に響く言葉が多い。

 私は休日には自宅の板塀を塗ったり、庭でじゃがいもを掘ったり、自分で色々手を動かしながら、建物を大切に手入れし、心安らぐ時間を自宅で家族とゆっくりと過ごしている。 便利とは言い難い郊外でもこうして心地よい暮らしができて幸せだな、と先生の言葉を思い出す、今日この頃。


 先生がかつて住まわれた、日本最初の高断熱住宅と言われる住まいは、これまた研究室の先輩のイラン人、タギ氏が手入れをしながら先生の思いを守るように大切に住んでいる。(卒業してから、2017年に再訪)

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こちらにも掲載された、建築業界では話題性のあった住宅です。



 話は逸れるがちょうど先程、住宅業界の営業マンのパワハラ事件のニュースを聞いた。
家って、車を買うような勢いで取得するのではなく、もう少し自由に熟考の上で、のちに人生の写し絵になるような大きな存在なのではないか?

 少なくとも、当事務所では数はこなせないが、規模の大きい小さいではなく、「丁寧な暮らし」をしたい人のための住まいを創っていき続けたいと、先生の訃報を聞いて強く再認識。


 先生、私はこの道で頑張ります。 本当にありがとうございました。

大林勇設計事務所


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