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古民家に手を入れる(その3) [古民家改修]

完成当時の新聞記事がまだサーバーに残っているようです。

東海日日新聞の記事



ちょっと順番が前後してしまいますが、どの程度まで手を入れるかを工期や予算、もちろんお客さんのリクエストにより決めます。



そこで不要なものをどんどん削ぎ落としていきます。これは中々難しい作業です。もちろん手壊しです。この時は部分解体に関係ない部分の作業に大工さんにすでに入っていたので、私がいない時でも大工さんが都度判断して解体屋さんの手が止まらずに順調な作業ができました。





この状態から壊し始める。左下はカマドです。





中央奥に見えるのは薪で炊く風呂。





だいぶすっきりしました。





広角レンズで撮るとこれくらい。





外から見ると、危うく「廃墟?」という位まで取り除きます。



個人的には、40年前くらいのリフォームが「残念なデキ」かな、と思っています。木目柄のプリント合板が多用された壁、皆さんの近くにありませんか?ここではそのプリント合板はためらいなく撤去し、元の柱を露出させました。さらにこの時期のリフォームの床合板は接着剤の効果がなくなり、ブカブカになっているのでこれも迷わず撤去。



「直すなら、下地から。」これは重要です。表面だけでごまかしてはいけません。





基礎はありません。器用な大工さんなので、束石の代わりに現場でコンクリート打ち。この上に束を建て、





床下地を組み、断熱を入れる。



途中は端折りますが、



薪で炊く風呂の場所は台所になり、





カマドがあった辺りから居間方向を見るとこうなります。



この仕事は最初の古民家改修だったので本当に勉強になったこともあり、印象深い仕事でした。





工事前





工事後



私の思い込みかもしれませんが「建物も喜んでいるだろうな。」竣工後、この家を訪問するといつもそんなことを考えてしまうのです。



大林勇設計事務所



古民家に手を入れる(その2) [古民家改修]

前回の続きです。



余程、予算に余裕が無い限り正直な所、完全バラシの古民家再生は容易なことではありません。



今まで住んでいた家の不自由な部分に手を入れて今の暮らしに適した使い方に「改修」するのが一般的には現実的な方法だと当事務所は考えているため、流行語のように使われる「古民家再生」では無く「古民家改修」を業務範囲としています。



まずは、躯体の点検。



水平の把握。





水平が狂っている事が多いので、大工がジャッキを駆使し調整を行います。柱は石の上に載っているものの、長い間に落ち葉が溜まったり土に埋まったりすると、痛んでいます。ここもジャッキアップの際にU大工が補修していました。





床組みも痛んでいる部分は補修。ここは鶯張り化していました。

悪い部分は下地から直す。





古い家では部分撤去を始めてから発覚する事件も多く、台所流しの裏の壁はセメントをケチったのかコンクリートが弱く指でポロポロと崩れました。この壁は急遽撤去しました。





骨組みを丸裸に。



まずは躯体が健全な状態かどうかを確認する事は、古民家改修では重要です。ここで重大な欠陥がある場合は、改修工事自体の存続にも関わるので慎重に確認したいところです。当事務所ではまだ経験ありませんがシロアリがあまりに酷い場合など作業中止の決断も必要かもしれません。



写真を見ていたらいろいろ書きたい事が出てきました。今日はこの辺で。



大林勇設計事務所

古民家に手を入れる(その1) [古民家改修]

 古民家に手を入れるリフォームの問い合わせがありましたので、一つ記事を作っておきます。話が長くなりそうなので今日は「その1」にしておきます。



?費用と目的をはっきりさせる。



 まず、スタート地点としてどこまで費用を掛け、何をしたいかを決める。これが重要。







 基本的に、古民家と呼ばれるものは現行の法規の構造検討をするとかなりの確率でアウトとなる。現行の検討法では田の字型プランでOKに成るわけが無い。基礎が無くて、石の上に建っているのだから都会の建築士が見たら驚くだろう。ただ、だから弱いかといえば、「どちらとも言えない。」というのが私の本音。構造検討して最近立てられた住宅に対して、今まで無事住んで来たという事実もあるし、確固とした倒れなかったという「実績」がある。「論より証拠」なんて言葉もありますし。



 今まで住んできた、俗に言う古民家を少しいじりたいと言う人が現れた時に、「構造の現行法規に適合するようにする事がお客さんの安全のために絶対必要です。」というのが建築士としては正論なのだろうけど、今まで住んできた人は何も悪い事をしてきた訳ではないし、都市計画区域外ののどかな地域では人様に迷惑を掛けるわけでもない。杓子定規に完全に適合させるのであれば梁1本1本に番号をつけてすべてバラバラにして、束石を掘り出し新たに鉄筋コンクリートの基礎を作り、その上に木組みをもう一度組み立てるというとんでもない手間がかかる。それはすなわち工事金額の上昇につながる。はっきり言って並みの新築より高いだろう。





 ただ私自身、それは住まい手の人格の否定と同時に家格(?。勝手に作りました。)の否定でもあると考えています。住まい感というのは人それぞれ違うものだし、住んでいる人が良ければそれ以上他人が踏み込む必要も無い。上の写真のように昔の痕跡が出てきたことを懐かしがって喜んでくれる感性は、突然発生するものではなく過去から今まで継続した生き様の蓄積のような物だな、なんて大袈裟な事を考え、尊重したくなるのです。私は厳格な役人にはなれないだろうなと思います。(笑)



そんなこともあり、構造を大幅に見直すかどうか、これが最初の分かれ道。これは依頼者の事情によるところが大きいです。もちろん大幅に見直さなくてもシロアリの痕跡や危険な前兆があったり不陸や不便があったりする場合は指摘した上で何らかの対策を採り、直す計画を立てますのでご安心を。



話がそれますが、基礎が無く石の上に立っていることはある意味合理的で、ジャッキアップして高さ調整ができるメリットもあります。ちなみに石の上に建つ事(石端建て)の是非については建築界でも賛否両論があり見解は一本化していないように思いますが、今度鈴木祥之先生を委員長とする「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会が、防災科学技術研究所・兵庫耐震工学研究センターで振動実験を行うようです。



http://green-arch.or.jp/dentoh/news.html#a06



選択肢を事細かに説明し、アドバイスを交えながら一緒に方法を考える。民主主義的な家作りが当事務所のモットーです。



さて、どれくらいの費用を掛けてどこまで工事範囲としましょうか?その1はこの辺で。



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